CASIO VA-10

CASIO VA-10

95年、溝の口の楽器屋さんで新品購入。


ボコーダー付きのカシオトーン」という、およそ当時のマーケティングやニーズを考慮したとは思えない狂ったマシンで、恐らくそのアナーキーさに負けて買ってしまった、いや買わされてしまった1台。


PCMのプリセット音色が100種類あったりして、32鍵のカシオトーンとしては豪華なスペックですが、音質はスーパーローファイ。頭にすごいアタックを持つアコピも健在。これ、SK-1とかと同じ音じゃねえか?


操作ボタンを押すたびに「ガッ」と鳴る迷惑仕様もお馴染みで、「ライブでなんか使わせてやるものか」という気概すら感じられます。


外部入力ソースのピッチでプリセットを鳴らせる機能もあって面白いのですが、検出が厳しすぎるのか、ソースがボーカルの場合思ったようには鳴ってくれません。ケロッケロになっちゃいます。今使ってみたら却って面白いかも。


簡易なシーケンサーも付いていて、記録した演奏に自動でコードを付ける機能なんてのがありますが、まともなコードを付けてくれることはありません。なに弾いてもzaudy*1ばりの前衛曲になってしまいます。


このVA-10、内蔵エフェクトがやたら充実しており、プリセット60種に、あろうことかユーザーエフェクトの記録すらできてしまう無駄な高機能ぶりを誇っています。
エフェクトのルーティングも充実していて、プリセットだけにかける、外部音源だけにかける、両方にかける、などが設定できます。
ただし音質はスーパーローファイ。このあたりの潔さが好きです。
そして、このエフェクトの中に「Vocoder」があり、これこそがVA-10のメインディッシュ、要するに「VocoderTOKIO!」なわけです。


ボコーダーを使う手順は、まずボコーダーに適してそうなプリセット音色を選び、本体外部入力端子にマイクを繋ぎ*2、エフェクトから「Vocoder」がらみのやつを選びます。で鍵盤押さえて声を出せばボコーダーのいっちょあがり。存分にトキオだのなんだの言えばいいのですが、なんとも粗っぽい音質で、少なくともこれで何と言っているのかを音で判断するのは難しいでしょう。実際当時作った自分のデモテープ*3ボコーダーとして使ったりしたのですが、誰もボコーダーを使っていると気付いてくれませんでした。


ボコーダーTOKIO!」というのは、このVA-10が売り出された当時の広告で謳われていた名コピーなのですが、実際に「Technopolis」における「TOKIO!」を再現するにはピッチベンドが不可欠であり、ベンドホイールを持たないVA-10では「TOKIO!」の再現はキツイという事実が購入者に重くのしかかります。
まあ、本当に「TOKIO!」だけが目的でこの機種を買う人はいなかったでしょうが。


とりあえず、エフェクトを中心とした音色の荒々しさを楽しむには良いマシンだし、「おそ松くん」に出てくる「ダヨーン」のようなルックスも可愛いし、買って損したとは思ってません。「音で遊べる」という意味において、これほど充実した機械も無い気がします。見つけたら買え。そして使え。


「ミニ鍵盤のボコーダー」なんてアイディアを踏襲するマシンは、今後出るこたないだろな、と思っていたのですが、2002年にKORGから「microKORG」がリリースされ、大ヒットしました。
microKORGは、あくまで「MS-2000のダウンサイジング版」という認識を持っているので「VA-10がmicroKORGの原点」とは思いませんが、VA-10に託した夢が、microKORGで叶ったような気分を、ライブでmicroKORGを弾く時に感じています。


とりあえず、この日記をアップしたらまず「キーワードの編集」で「TOKIO」をキーワードから外さないといけません。単にアクセス稼ぎたいだけなら残しといてもいいけど、「シンセ好きのジャニーズファン」がいるとは到底思えないし。

*1:HP無くなっちゃったみたいで残念。凄い音楽家だった

*2:安っぽい専用インカムマイクが付属しますが、頭に回す部分が速攻で折れたため、捨てちゃいました。

*3:サイモンガー&ファンクというファンクバンドです。恥ずかしくない!